マリアッチとは
マリアッチとはメキシコの伝統的な楽団の「形式」であり、またその音楽。ビウエラやギタロン、バイオリン、トランペットなどで構成されるメキシコ伝統の楽団形式(編成のスタイル)がマリアッチと呼ばれ、この楽団が演奏する音楽もまたマリアッチと呼ばれます。
そしてマリアッチの楽団形式には次の二種類があります。
マリアッチ・トラディショナル
マリアッチには二種類の楽団形式があり、一つは19世紀に農民やカウボーイたちの間で生まれた伝統的なマリアッチ。(マリアッチ・トラディショナル) ハリスコ州の伝統的な衣装とソンブレロ(大きな帽子)をまとい、ビウエラ、ギター、バイオリンといった弦楽器中心で演奏される。このスタイルではトランペットが含まれていません。
マリアッチ・モデルナ
もうひとつは比較的新しいマリアッチ(マリアッチ・モデルナ)1930年代以降に広まったスタイルで、トランペットが加わり、またメンバー全員がチャロと呼ばれる黒い衣装を着て演奏します。こちらがよく見かける典型的なマリアッチのスタイル。
マリアッチ楽団はランチェーラやソン、コリードなど様々なジャンルのメキシコ伝統音楽を演奏します。
ランチェーラとは
マリアッチ楽団により演奏される、メキシコの代表的な音楽ジャンルの1つ。3拍子や2拍子のゆったりとしたテンポの曲が多く、ギター、バイオリン、トランペットなどの演奏をバックに歌手が情熱的に歌い上げる・・・ おそらく多くの人がもつメキシコ音楽のイメージに最も近い音楽です。
起源はメキシコ革命と同じ時期の1900年代初頭。1930年以降のラジオの普及、1930~1970年代のメキシコ映画の繁栄と共に世界中へ広がり知られるようになりました。代表的な楽曲としてはシエリート・リンドやボルベール・ボルベール等が有名、またルイス・ミゲルの「メディア・ブエルタ」やラ・ビキナの「カルロ・セビージャ」など新しいヒット曲もあります。
ソン
キューバのソンとは全く異なる、メキシコにもソンと呼ばれる音楽ジャンルがあります。テンポの速い3拍子の楽曲が多く、ビウエラ、ギター、バイオリン、トランペットなどで編成されるマリアッチ楽団に演奏されることが多い。 ランチェーラと同様こちらもメキシコを代表する伝統音楽の1つです。
ノルテーニョ
ノルテーニョは「北部の」という意味で、独立後にメキシコ北部で誕生。以後メキシコ中にひろまった音楽ジャンル、パーティ音楽として知られます。バホ・セストと呼ばれる12弦ギターとアコーディオン、ウッド・ベースなどで構成される楽団(コンフント)によって演奏される。ポルカなどヨーロッパ民族音楽の影響を受けており、アコーディオンの音色が印象的。
コリード
ポルカやワルツのリズム、アコーディオンの奏法などノルテーニョの影響を受けて形成されたメキシコ音楽ジャンルの1つ。メキシコ革命前後の1900年代初頭に現れ、その時のニュースや出来事を大衆に伝える歌として広まりました。
またコリードの一種であるナルコ・コリードというジャンルはメキシコ~アメリカで人気が高く、90年代アメリカで発売されたラテン音楽レコードの2/3はこのナルココリードだったとの事。Narcoとは麻薬組織を意味しそのような組織を肯定する歌詞が入るためメキシコのラジオやTVでは放映禁止になる事が多いのですが、しかしこういった歌詞には熱狂的支持者がおり、今日でも人気があります。
テハーノ
テハーノはテキサス州に住むメキシコ人による音楽。Tex-Mexとも呼ばれる。ドラムス、ベース、アコーディオンなどで構成される「コンフント」形式の楽団や、それにブラスが加わる「バンダ」形式の楽団などにより演奏されダンスミュージックとしても使われる。
2021年にネットフリックスで公開されるドキュメンタリー映画「セレナ:テハーノの女王」で再び注目が集まるセレーナ(1971-1995)もテハーノ音楽を代表する歌手の1人。彼女はテクノ・クンビアのアレンジを取り入れたテハーノ・ポップスで90年代人気となり、亡くなった後も根強い人気があります。